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法務局で遺言書を保管できる? 自筆証書遺言の保管制度について、制度の概要や利用方法を解説

法務局で遺言書を保管できる? 自筆証書遺言の保管制度について、制度の概要や利用方法を解説

遺言書を遺すにあたって、「どこに保管したか忘れてしまうかも」「誰も見つけてくれなかったらどうしよう」「改ざんされないか心配」といった不安を抱える方も多いでしょう。

そんな不安を解消するために2020年から始まった制度が自筆証書遺言書保管制度です。この制度を使えば、法務局が遺言を保管してくれるうえ、相続人への通知もしてくれます。

今回は、この制度の概要を紹介するとともに、利用方法や制度のメリット・注意点などを詳しく解説します。

そもそも自筆証書遺言とは

この制度で法務局が預かってくれる遺言書は自筆証書遺言に限られますが、そもそも自筆証書遺言とはどのようなものでしょうか。

遺言はその作り方によって大きく3つの種類があり、自筆証書遺言はその1つです。紙とペン、ハンコがあれば作成できることから、他の2種(公正証書遺言・秘密証書遺言)と比べて手軽に作成でき、コストが抑えられるのがその特徴です。

ただし、自筆証書遺言には以下のようなデメリットがあります。

  • 亡くなった後、実際に遺産を分配する前に、家庭裁判所による遺言の検認が必要となる。
  • 形式の不備により無効になる可能性がある。
  • 内容が法的に間違っており、自分の思った通りに財産が分配されない可能性がある。
  • 紛失の可能性/そもそも見つけてもらえない可能性がある。
  • 改ざんが容易である。

これらのデメリットのうち、①②④⑤を解決してくれるのが、今回ご紹介する自筆証書遺言書保管制度です。

自筆証書遺言書保管制度とは

自筆証書遺言書保管制度とは、自筆証書遺言を国の機関である法務局に保管してもらう制度です。利用には、遺言者本人が法務局に出向く必要があり、そこで遺言書の検査を受けます。検査後、保管された遺言書は、原本と画像データで保管され、原本は遺言者の死後50年間、画像データは遺言者の死後150年間保管されます。

【利用できる人】

自筆証書遺言を作成できる人であれば誰でも利用できます。ただし、代理人による申請は認められていませんので、注意が必要です。
※ 民法では、遺言が書けるのは15歳以上の人と規定されています。
※ ただし、認知症の方など、判断能力が低下している方は、医師2名の立会いがなければ作成できません。

【利用料】

保管時にかかる手数料は、1通につき3,900円です。その他、遺言書の検索や証明書の請求をする場合にも、別途手数料がかかります。

メリットと注意点

では、自筆証書遺言書保管制度にはどのような特徴があるのでしょうか。

主なメリットと注意点は、以下のとおりです。

メリット

  • 遺言書の紛失や改ざんを防げる
    → 自筆証書遺言は自分が亡くなった後に家族に見つけてもらう必要があるため、その場所を誰かに伝えておくことが通常です。しかし、場所を伝えると、遺言で不利になってしまう相続人がその遺言を捨ててしまったり、改ざんしてしまったりといった事態につながりかねません。
    法務局に遺言書を預けて保管してもらうことで、このようなリスクを軽減できます。
  • 遺言書の形式的なチェックを受けられ、検認が不要になる
    → 自筆証書遺言には「日付を書かなければならない」「手書きでなければならない」などのルールがあり、このルールが守られていない遺言書は無効となるおそれがあります。
    保管制度を使うと、受付のときにこの形式的なルールをきちんと守れているか確認してくれます。さらに、こうして事前に形式面の審査が終わっているため、遺言者が亡くなった後に通常必要となる家庭裁判所での検認手続きが不要となり、相続人の手間を減らすことができます。
  • 死亡後、遺言書の存在を相続人等に通知できる
    → 自筆証書遺言書保管制度では、事前に「自分が亡くなったときに遺言書の存在を知らせてほしい人」を3人まで指定することができます。この指定をしておけば、遺言者が亡くなった後、遺言書が法務局に保管されているという事実が指定された人に通知されます。これにより、せっかく書いた遺言書が誰にも見つけてもらえないという事態を防ぐことができます。
    なお、遺言書はデータでも保管されるため、相続人等は全国の法務局からその内容を確認することができます。
  • 公正証書遺言と違って証人が不要で、コストも抑えられる
    → 最後は公正証書遺言と比較したメリットです。公正証書遺言は、公証役場で法律のプロである公証人が作成してくれる遺言です。しかし、作成にあたって2人の証人に立ち会ってもらう必要があり、その証人には遺言の内容が知られてしまいます。また、作成には資産額に応じて数万円の手数料がかかります。
    その点、自筆証書遺言書保管制度では、証人の立合いは不要ですし、コストも少額に抑えられます。

注意点

  • 遺言が法律的に有効かどうかはチェックされない
    → この制度を利用するにあたり、最大の注意点は、遺言書の内容がプロにチェックされないという点です。遺言書を預ける際、法務局はその遺言が有効であるか否かの「形式面の」チェックはしますが、「その内容が法律上問題ないか」「税金面で不利な内容ではないか」等の内容面のチェックはしません。よって、他界後、自分が思ったように財産が引き継がれないリスクや、相続人に想定外の負担がかかるリスクがあります。
    内容を確認してもらうには、別途専門家に相談する必要があるのです。
  • 必ず本人が法務局に行って申請しなければならない
    → 保管の申請は、遺言者本人が法務局に出頭して行わなければなりません。たとえ本人の身体上の事情で外出が難しくとも、他の人にお願いして手続きを代わってもらうことはできませんし、郵送で申請することもできません。
    ※ 外出が難しい方は、公正証書遺言を利用すると、公証人に出張してもらうことができます。
  • 遺言書の様式が決まっている
    → 保管制度では、どのような自筆証書遺言でも預けられるわけではありません。保管できる遺言書は、民法で定められたルールのほか、紙の大きさや余白の幅など、いくつかの様式に従ってものでなければなりません(詳細は後述します)。

保管申請の流れ

では、実際に自筆証書遺言書保管制度を利用するには、どうすればよいのでしょうか。

具体的な手続きの流れをみていきましょう。

1 自筆証書遺言を作成する

まずは、法務局に預ける遺言書を作成します。

遺言書の作り方はこちらの記事で解説していますが、おおまかには以下のような手順で作ります。

  • 遺産をリストアップする
    → まず、自分が持っている財産や負債を把握しましょう。現預金や不動産、株式はもちろん、ローンの残債や保険など、自分が死んだ後に残るものの全体像を把握することが大切です。
  • 相続人や受遺者の確認
    → 次に、自分の相続人が誰かを確認しましょう。相続人以外に財産を残したい場合には、ほかの相続人とのバランスや税金などの面で注意が必要です。また、相続人であっても、特定の相続人に多くの財産を残す場合、遺留分に注意しましょう。
  • 遺言の内容を決める
    → 続いて、誰に・何を・どうやって相続させるか決めましょう。このときに、遺言の内容を実現する「遺言執行者」も決めておくと、銀行口座の解約などの手続きをスムーズに進めることができます。
  • 遺言書の作成
    → 内容が決まったら、実際に遺言書を作成してみましょう。自筆証書遺言は、紙・ペン・はんこ(実印が望ましい)があれば、すぐにでも作れます。ただし、法務局での保管制度を利用する場合、遺言書の形式には、以下のような要件があります。
    ・用紙はA4サイズ
    ・上5mm、下10mm、左20mm、右5mmの余白をそれぞれ確保する
    ・用紙の片面のみに記載する(裏面は白紙にする)
    ・各ページにページ番号を記載し、ホチキス留めはしない

2 法務局に予約を入れる

遺言が完成したら、保管先の法務局に連絡して手続きの日時を予約します。

保管先となる法務局は、「住所地を管轄する法務局」「本籍地を管轄する法務局」「所有している不動産を管轄する法務局」のいずれかです。

法務局は全国にありますが、これらの法務局でしか受け付けられませんので、ご注意ください。また、法務局によっては遺言書の保管を行っていない場合もありますので、事前にご確認ください。

3 必要書類をもって法務局へ行く(保管の手続きをする)

予約した日時に法務局へ行き、保管の手続きを行います。

その際に必要となる持ち物は以下のとおりです。

  • 保管申請書
    → 全国の法務局で入手できるほか、こちらのページからダウンロードできます。
  • 作成した遺言書
    → 外国語で作成した場合、訳文も必要です。
  • 住民票
    → 本籍および筆頭者の記載があり、マイナンバーは省略されたもの
  • 顔写真付きの身分証(運転免許証・マイナンバーカードなど)
  • 3,900円分の収入印紙

法務局で書類を審査し、遺言書の形式などに問題がなければ、無事に遺言書が保管されます。手続き終了後には「保管証」が発行されるので、大切にお持ちください。

4 保管後の手続き

一度保管をすれば、特段手続きは不要です。

ただし、遺言者や通知先の相続人等の氏名や住所が変わったら、変更の届出をしなければなりません。

また、保管した遺言書を変更・撤回する場合には、その旨を申し出る必要があります。変更・撤回は何度でも可能です。

保管を撤回した遺言書は手元に返ってきます。法務局で保管がされないだけで遺言書の効力はあるので、遺言自体を撤回したい場合は破棄してください。

遺言者が亡くなった後の手続き

遺言者が亡くなると、相続人や受遺者、遺言執行者などの関係者は、法務局に遺言書情報証明書の発行を請求できるようになります。

この証明書は、銀行預金の解約や不動産の名義変更などの相続手続きで利用できます。

通常の自筆証書遺言であれば相続手続きの前に家庭裁判所での検認が必要となりますが、保管制度を利用すれば検認が不要になるので、手続きを迅速に始められます。

よくある質問(Q&A)

Q
法務局で遺言書を保管すれば、必ず有効な遺言書になりますか?
A

法務局では、遺言書の形式的な審査が行われるのみであり、内容の実質性については審査されません。自分の意思が法的に正しく遺言書に反映されているかどうか、ご不安な場合は弁護士や司法書士などの専門家に相談するようにしてください。

Q
保管した遺言書の内容は確認できますか?
A

遺言者の生存中は、遺言者本人であれば、遺言書の閲覧を請求できます。他界後は、相続人や受遺者、遺言執行者などの関係者も閲覧・証明書の請求等ができるようになります。

まとめ

法務局の自筆証書遺言書保管制度は、「そこまでコストをかけずに遺言書を作りたいが、確実に遺言書を保管したい」「自分が亡くなった後に遺言書の場所を知らせたい」と考える方にうってつけの制度です。遺言書を確実に保管し、自身の他界後に相続人等に遺言書の存在を通知してくれるのに加えて、遺言書の形式的な審査をしてくれるといったメリットもあり、不安を軽減してくれるでしょう。

ただし、遺言書の法律的・税務的な内容面については審査されません。内容に不安がある方は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

この記事を書いた人
ひろはた司法書士事務所 司法書士 廣畑 優のプロフィール写真

執筆・監修:司法書士 廣畑 優(ひろはた司法書士事務所代表)

大阪市に事務所を構える司法書士/相続・遺言・家族信託・成年後見など、家族や財産に関する手続きを中心に幅広く対応

1級ファイナンシャル・プランナー(FP)資格も保有し、法務とお金の両面からご家庭をサポート/「わかりやすく、誠実に」をモットーに、安心して相談できる身近な専門家を目指しています。

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